2011年10月31日

チェルノブイリと福島―ベラルーシの経験を福島に生かせるか(4)

ベラルーシの民間研究所で作られているリンゴのペクチンで作られたビタペクトというサプリメントのことが少し話題になっている。
このペクチンは、体内に入ったセシウムを除去する効果があると言われているからだ。その件で先日もその研究所の副所長さんが来日し、記者会見が行われていた。
今回のベラルーシ訪問で、その真偽を確かめることができれば、と思っていたのだが、その研究所に行く時間はなく、事前に聞いた話では、今、手に入りにくくなっているということだった。
ベラルーシの赤十字でも、チェルノブイリ事故後の対策として低線量被曝の人のセシウムの排泄にペクチンが使われているとの話だった。
しかし、そのビタペクトを学校で子どもたちに与えたデータでは、確かにビタペクトを飲む前と1カ月後の体内のセシウム量を比べると減ってはいたが、ビタペクトを飲んでいないグループとの比較がなかったため、効果が明らかかどうかわからなかった。


それはともかく、大きなスーパーでその類似品が販売されているのを発見した。要するにセルロースとペクチンでできたものだ。
その説明書には色々な効果が書かれてあるのだが、そのトップに1、放射線病の予防、放射能汚染地域での放射性核種の排出、と堂々と書いてある。
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そういうものがスーパーに並んでいる光景は異常であるはずなのに、全く日常の光景のようにあまりにも普通に売られていたのだ。
日本でもこういう日が近いうちに来るのかもしれないと恐ろしく思っていたら、帰国して間もなく、連日たくさん届くセールスメールの中にこんな文字が。
個人被爆(ガンマ線外部被爆量)の測定に最適!個人用線量計○○○○発売中☆」 
posted by sneshika at 00:31| 原発

2011年10月29日

チェルノブイリと福島―ベラルーシの経験を福島に生かせるか(3)

ブレスト州内分泌診療所のアルトゥール院長とウラジーミル医師は、移動検診チームとしても働いている。彼らは広島でも何度か研修を受けた人たちで、日本の吸引穿刺の技術を習得し、現在では他の医師もその技術を身につけて現場で実践している。吸引穿刺で細胞診断することで、不用な手術を減らすことができる。今回の医療支援団に初めて参加した甲状腺専門の医師も、彼らの技術の高さに、日本でもこれほどの技術を持った人は少ないと感心していた。

研究者ではなく現場の医師としての彼らからの日本へのアドバイスは、
 
1、人々の不安を減らすために正しい情報が出されなければならない。
 2、正しい公衆衛生を徹底すること。つまり、汚染されていない食物を摂る、シャワーを浴びて放射性物質を洗い流す、規則的な排泄習慣、免疫機能を高めるために睡眠をよくとり、色々な種類の食べ物を摂るなどだ。

特別なことではないが、自分や家族の身は自分で守るために、少しでも健康被害を少なくするために、できることはやっていくべきではないだろうか。
アルトゥールさんは個人的な意見として、チェルノブイリ原発事故の影響は100年は考えていかないといけないだろうと語った。日本もその覚悟で対応していかなければならないだろう。
  「日本でもスクリーニングをするのなら、喜んでお手伝いをしましょう。」とアルトゥールさんは付け加えた。 

関連記事:今日の中国新聞「フクシマとヒロシマ」<3>低線量被曝 20年経てがん患者なお


posted by sneshika at 09:31| 原発

2011年10月28日

チェルノブイリと福島―ベラルーシの経験を福島に生かせるか(2)


ご存知のようにベラルーシではチェルノブイリ原発事故の影響で甲状腺ガン患者が増えている。
ゴメリ州が最もよく知られているが、ブレスト州にもストーリン、ピンスクなど汚染地域がある。いわゆるホットスポットという地域だ。
ブレスト州はベラルーシでは西側に位置し、ポーランドと国境線を分かつ。そのポーランドではチェルノブイリ事故後ヨード剤がすぐに配られたため甲状腺ガンの発症は少ない。その事実に基づく反省も日本では生かされなかったように思う。

ブレスト州の人々に対してはベラルーシ赤十字の移動検診チームがスクリーニング検査を行っている。
超音波で異常が認められた人たちが、私たちの訪問に合わせてブレスト州内分泌診療所に集まっていた。
この日も超音波診断を受け、今までの経過などから細胞診が必要だと医師が判断した人が吸引穿刺を受けていた。(ここで間違ってはいけないことは、この日来ていた患者さんはスクリーニング検査で既に異常が認められた人たちだということ72日のブログでも書いたように毎日たくさんの患者さんが訪れ、その内何人もガンが見つかるというわけではない。昨日から始まった中国新聞の連載中、28http://www.chugoku-np.co.jp/kikaku/fukushima/series/Fs201110280001.html 読み間違えないようにご注意頂きたい。)


吸引穿刺を受けた患者さんに話を聞くと、皆、検診を受けるまで甲状腺の異常には気がつかなかったという。以前手術を受けた女性も、全く自覚症状はなかったそうだ。 検診がなければ、発見されず、手遅れになってしまう恐れがある。ベラルーシはもともとヨード欠乏地域で、日本は海に囲まれヨードが豊富なため、ベラルーシと全く同じように甲状腺ガンが増えるかどうかは分からない。しかし、可能性は否定できない。日本でも10月から福島県内での検診が始まったが、きめ細かい検診を行うには甲状腺の専門医がたくさん必要となるだろう。
posted by sneshika at 11:09| 原発

2011年10月27日

チェルノブイリと福島 ―ベラルーシの経験を福島に生かせるか(1)

久々の更新です。

チェルノブイリと福島―ベラルーシの経験を福島に生かせるか
 

925日から101日、ベラルーシへの医療支援に同行した。毎年行われるチェルノブイリ医療支援団体からの派遣で、私は三度目の訪問となる。
参加を決めるにあたって、実はとても悩んだ。今、福島の原発事故で多くの人々が苦しんでいる中、他の国の支援をしている場合ではないだろうと。
しかし今まで、はたしてどれだけ真剣に現地の人の言葉に耳を傾けていたかを考えると、もう一度行って25年の経験を知り、福島に少しでも生かすことができないか、との思いで参加に踏み切った。
また、今回は新聞3紙の記者の同行もあったので、今までとは違った方面での情報が得られるかもしれない、という期待もあった。

 ベラルーシでの最初の訪問は日本大使館。
松崎大使は、私たちの訪問に、堰を切ったように語り始めた。
福島第一原発事故後、日本の国の機関からベラルーシを訪れたのは農水省だけだった、本来厚労省や文科省が一番に来て情報を得るべきではないのかと。農水省からは土壌の専門家と畜産の専門家がやってきて、ベラルーシの研究所からたくさんの資料を持ち帰ったとのことだった。
それを聞くと、現在に至るまで日本で行われている対策に思いが及ぶ。やはり日本の当局がしていることは、人々を被曝させないための避難より、汚染した土壌をなんとかして、避難を減らしたり、いったん避難した人々を元に戻すというものなのではないか。

チェルノブイリの状況をよく知り、しかも福島県出身の大使は、半年が経過しても具体的な方策ができていない日本の現状にいらだちを隠せなかった。
チェルノブイリでも30キロ圏内の汚染地域にはいまだに戻ることができない。 もちろんお年寄りなど住み慣れた土地で余生を過ごしたいと自発的に戻っている人々はいるが、少なくとも子どもや若者が暮らせる環境ではない。
日本でも高汚染地域には今後長い期間戻ることはできないだろう、いたずらに戻れると期待を抱かせるような対策を取るより、土地を買い上げるなど、抜本的な対策・補償を早く行うべきだと語った。
また、甲状腺ガン以外のガンの放射線との因果関係については、チェルノブイリ事故前、旧ソ連時代は医療体制は制度的には整っているように見えたけれど、中身は充実していなかったのでデータはなかったと言っていい、統計は鵜呑みにしてはいけない、とのことだった。
要するに、甲状腺ガン以外の癌に関してはデータ上で判断するとすれば「ない」とか「ある」とか言えるレベルではなく、「わからない」というのが正しい表現なのかもしれない。(つづく)
   
posted by sneshika at 08:48| 原発